Webサイトでお気に入り機能が使えると、あとで購入したい商品や参考にしたい記事を見つけたときに詳細説明につながるリンクを保存しておけます。お気に入り機能は大手ECサイトなどでは一般的ですが、WordPressで作られたサイトでも比較的簡単に実装することができるのです。また、EC機能とお気に入り機能を統合すれば、決済機能を備えた本格的なECサイト構築も難しくありません。この記事では、お気に入り機能の実装方法やメリットについて解説していきます。
目次
Webでのお気に入り機能とは?
ほとんどのWebブラウザには「お気に入り機能」がついています。これは、Webサイトを閲覧していて気に入った商品が掲載されたページや、有益な情報が記載されているページがあったときに、あとで参照できるようにブラウザに登録しておく機能です。ブラウザによっては、メニューバーで「ブックマーク」と書かれていることもあります。「ブックマークに追加」などにマウスオーバーしてクリックすると、表示しているWebページのURLがお気に入りのリストに保存されるのです。読みかけの本に栞を挟むように、時間が経って他の作業をしてからでも、またそこから情報収集を再開できます。栞と違うのは、Webのお気に入り機能は、ほぼ無限の数を保存しておける点です。
クラウドベースのアカウントと連携したWebブラウザなら、時間も場所も選びません。インターネットにアクセスできるPCがあるなら、ログインすれば、保存しておいたお気に入りのページにアクセスできるのです。さらに、PCがなくても、スマートフォンやタブレットのブラウザからも見ることができます。このような、Webページ以外でも、ECサイトなどでお気に入り機能が使われることがあります。たとえば、ある商品を探していて、複数のブランドのものを比べたいことがあるでしょう。
その際には、ECサイトの商品を検索するのですが、購入候補となりそうな商品が見つかった時点で「お気に入りリスト」に保存しておくわけです。いくつか候補が集まった時点で、リストに並ぶそれらを比較することができます。一般に、デジタルデバイスは検索などは高速で便利なのですが、一覧性に弱いといわれています。とくにスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでは、いくつかを並べて同時に比較することが難しいのです。ECサイトでのお気に入り機能は、その一覧性をデジタルデバイスになんとか実装しようとする工夫の1つといえます。
お気に入り機能のメリット「運営側」
お気に入り機能を実装することで運営側が得られるメリットは、おおむね4つ挙げることができます。1つ目は、ユーザーにサイトを再訪問してもらえることが期待できる点です。お気に入り機能によって、ユーザーのWebブラウザ上に、クリック1つで戻ってこれるリンクが保存されています。Webサイトでものを探すときに、もしお気に入り機能を使わなければ、過去に見たサイトに戻って再表示することは、大きな困難を伴います。デジタルメディアでは情報は液晶モニターに表示するだけなので、雑誌やチラシなどの紙メディアのように、あとですぐ参照できる記録媒体とは性格を異にします。
2つ目は、ECサイトなどでの商品やサービスの場合、会員登録していればユーザーが求めている傾向をデータとして把握できる点です。ほとんどのECサイトでは、メンバーシップ制をとっています。会員登録すると、ログイン名とパスワードでアクセスできる専用ポータルサイトに案内されます。ここから、ジャンルごとに整理されたさまざまな商品群の情報ページにアクセスしてショッピングを楽しむのです。このとき、運営者はユーザーの購買行動を細かく把握することができます。そのなかでも、お気に入り機能を使った「お取り置きリスト」は、ユーザーがどのような商品を好むのか、また売れ筋商品の傾向などが具体的にわかる情報源となるのです。
3つ目は、価格の変更などを通知することで売り上げのアップが期待できる点です。ユーザーにとって、お気に入りリストに入れてある商品は、購買を決断するための最後のひと押しを待っている状態といえます。マーケティングの現場では、ユーザーの購買行動を説明する時に「AIDMAの法則」がよく引用されます。この法則は、Attention、Interest、Desire、Memory、そしてActionという心の状態の変化で購買が決定されることを示しているのです。この法則にあてはめれば、お気に入りリストに加えるのは、Memoryというほぼ最終段階の行為です。購入ボタンを押すというActionまで、あと一歩なので、期間限定の値引き情報などを個別に提供すれば、売上げにつながる可能性があります。このような、ピンポイントでのマーケティングが可能な点もお気に入り機能の魅力といえるでしょう。
4つ目は、類似した商品の通知をすることで新たな商品の購入も期待できる点です。ユーザーの嗜好は小さく変わるが大きくは変わりにくいといわれています。一度気に入って使い始めるとブランド・ロイヤルティが生まれるため、同じような商品を使い続けるのです。同時に、目新しいものに敏感なユーザーは、よりよいものがないかを常に探し続けています。お気に入り機能を使った「お取り置きリスト」を見れば、そのユーザーがどのような「小さな変化」を求めているかがデータとして分かります。あとは、それに合わせた商品の訴求をすれば、効率的なダイレクト・マーケティング効果が期待できるのです。
お気に入り機能のメリット「ユーザー側」
お気に入り機能があることでユーザー側が得られるメリットは、主に以下の3つあるといえるでしょう。1つ目は、気に入ったサイトやWebページをいつでも閲覧できる点です。インターネットにアクセスできる環境があれば、いつでもどこでもお気に入りの情報を手に入れることができます。最新情報に敏感なユーザーにとっては、いつでも新しい情報が入手できる喜びは格別でしょう。2つ目は、参考になる記事を見つけたときにすぐにお気に入り登録ができる点です。お気に入り機能を使えば、ほぼワンクリックで登録できます。
手元にメモやペンがないときや、移動中であっても、素早く情報を記録しておくことができるのです。3つ目は、商品のお気に入り機能があれば、すぐに購入できないときや他の商品と比較検討したいときに便利です。詳細な情報を読んだり見たりしている余裕がない時にも、ブックマークしておけば、必要な情報へのヒモ付けができます。あとで、ゆっくり検討すれば良いので安心です。また、スマートフォンの画面では小さければ、ブックマークしておけば、自宅などのPCの大画面で詳細を確認することもできます。
WordPressにお気に入り機能を実装する方法
WordPressで作られたサイトにお気に入り機能を実装するには、主に2つの方法があります。1つは、最初からコーディングによって実装する方法です。WordPressの主要な記述言語であるphp(Hypertext Preprocessor)などのコーディングスキルのある人なら、既存のテンプレートをカスタマイズして作ることも可能でしょう。もう1つは、プラグインを使う方法です。どちらかといえば、こちらのほうが簡単で一般的といえます。お気に入り機能を持つプラグインの中でも、「WP Favorite Posts」「Favorites」「WooCommerce Wishlist Plugin」はおすすめです。以下で、この3つのプラグインを紹介していきます。
「WP Favorite Posts」の主な特徴
WordPress用のプラグイン「WP Favorite Posts」では、サイトに含まれるページをお気に入りとして登録しておき、あとで一覧表示することが可能になります。主な機能は2つあります。まず、WordPressで作られたページに「お気に入り追加ボタン」を設置することです。ページ内にボタンがあれば、Webブラウザでブックマークするより、操作が簡単になるでしょう。WP Favorite Postsは、登録されたお気に入りページを一括表示する機能も提供します。お気に入りとして登録したページだけを絞ってチェックできるのです。
また、登録したユーザーのみ、お気に入りリストを作成できるような設定も可能となっているため、ユーザーの囲い込みツールとしても有効に使えます。このとき、ユーザーごとのお気に入り情報はCookieで保存されます。Cookieとは、スマートフォンやPCに保存されるユーザー情報のことです。Cookieによって継続的に情報が蓄積されるため、サイトのリピーターにとっては使い勝手がよくなるでしょう。同じサイトであっても、表示される情報がユーザーごとで異なってくるため、ログイン不要の自分専用ポータルサイト的な使い方が可能になるプラグインといえます。
「WP Favorite Posts」の設定方法
「WP Favorite Posts」の設定方法はそれほど難しくはありません。まず、入手するには「WP Favorite Posts」の公式サイトからダウンロードするか、WordPressの管理画面から新規プラグイン検索します。準備ができたら、インストールして有効化しておきましょう。有効化後にメニューの「設定」をマウスオーバーすると「Favorite Posts」という項目が表示されるようになります。設定項目は大きく3つのパートに分かれています。
「オプション」「ラベルの文言設定」「高度な設定」です。オプションでは、登録ユーザーのみお気に入りリストを作成するように制限ができたり、ページ上でのお気に入り追加リンクの表示場所などが選べます。また、1ページあたりのお気に入りリストの表示件数なども設定可能です。ラベルの文言設定では、操作時に表示される文字列をカスタマイズできます。デフォルトでは英語なので、必要に応じて日本語化も可能です。高度な設定では、JavaScriptやCSSのファイルの読み込みを停止する指定が可能です。
「Favorites」の主な特徴
軽快な動作で人気のお気に入り機能追加プラグイン「Favorites」の特徴は、お気に入り登録をした際、ページが再読み込みされない点です。WP Favorite Postsでは、お気に入り追加動作の際に、ページの再読み込みがされるのですが、こちらのFavoritesはそのままです。読み込み動作を気にせず、お気に入りをその場で次々と登録することが可能になるのでストレスが少ないといえるでしょう。この軽快さを可能にしているのはCookieです。ユーザーの履歴は、会員登録していないユーザーでは、Cookieかセッションに登録されます。一方で、ログインしている会員ユーザーはuser metaにお気に入り情報が保存されます。
「Favorites」の設定方法
Favoritesは、WP Favorite Postsとくらべて設定も軽く済みます。まず、入手は、WordPressの管理画面から新規プラグインを検索します。Favoritesが見つかったら、インストールして有効化しておきましょう。有効化すると、メニューの「設定」の下層に「Favorites」という項目が表示されます。設定項目は大きく3つのタブに分かれています。「General」タブでは、ページのキャッシュ、デバッグようのデベロッパー・モードなどの設定が可能です。
「Users」タブでは、アノニマスなユーザーの設定や、ユーザー情報をどこに保存するかが選べます。アノニマスとは、無名の意味であり、ここではログインしていないユーザーを指しています。「Display & Post Types」では、投稿ページ、固定ページなど、ページ種類別にお気に入り追加設定を有効にするかどうか選べるのです。ここで選んだページは、入力されたテキストなどの「下」にクリックできる「Favorite」ボタンが表示されるようになります。
「WooCommerce Wishlist Plugin」の主な特徴
ネットショップが構築できるWordPressプラグインに「WooCommerce」があります。それと連携して使えるのが「WooCommerce Wishlist Plugin」です。たとえば、大手ECショップサイトに実装されているような「ほしいものリスト」的機能を実現します。このプラグインの最大の特徴は、ほしいものリストとECショップとをダイレクトに連携できる点です。リストからそのまま購入できるため、リピーター獲得や売上増加のための強力な武器になるでしょう。また、自分のほしいものリストの商品を、そのままSNSに共有することもできます。条件によっては、SNS経由のアクセスが大きく増える可能性があるのです。
「WooCommerce Wishlist Plugin」の設定方法
「WooCommerce Wishlist Plugin」は、単独では動作しません。WooCommerceをまずインストールして有効化したあとで、改めてこのプラグインを有効化する必要があるのです。有効化しておくと、管理画面の左コラムに「TI Wishlist」が表示されるようになります。この下層にある「General Settings」と「Style Options」の2つのポップなインターフェイスを持つ管理画面で設定します。具体的には、お気に入りボタンの表示位置や、ボタンデザインをCSSで調整する設定など、かなり詳細なデザイン変更が可能です。サイトのイメージを損なうことなくお気に入り機能を実装できるようになっています。その他、代表的なSNSとの連携ボタンや、クリップボードにコピーボタンなども簡単に実装することができます。
まとめ
豊富なWordPressプラグインを使えば、便利なお気に入り機能を比較的簡単に実装できます。WordPressのプラグインには、今回紹介したもの以外にもさまざまなものがあります。売上を上げたり、サイト制作が楽になったりするプラグインが豊富に揃っているのです。
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